LS生は日々進化中!

法律(司法試験対策等)について綴っていきます

司法試験過去問講座

まだまだ暑い日が続きますが、夜は涼しくなってきましたね。

いよいよ秋が来るのでしょうか。

 

さて、今回は司法試験過去問講座について書いてみたいと思います。

司法試験の攻略にあたり、過去問の分析は欠かせません。

しかし、出題趣旨・採点実感はあるものの、答案の形が示されているわけではないので、どのように書けばよいのかわからないという事態が往々にして生じます。ぶんせき本などの再現答案集はありますが、あくまで再現なので模範答案とはいえませんし、形式面・内容面が古く、今の司法試験の傾向にマッチしていないものもあります。

私は、今の司法試験の傾向にマッチし、かつ、全ての年度の解説・答案例が法改正・最新の判例・学説を踏まえたものとなっている過去問講座を探していました。

最終的に、当時、資格スクエアから販売されていた「秒速過去問講座2021(コンプリート)」を選び、それを使って過去問の勉強をしていました。

過去問講座のレビューはあまりブログでも見かけないので、実際使ってみた感想等を、以下書いていきます。参考にしていただければと思います。

*「秒速過去問講座」は、現在、「司法試験過去問講座」という名称で「加藤ゼミナール」から販売をされております。担当講師の加藤喬先生が資格スクエアから独立されたためです。

*なお、以下のレビューでは「秒速過去問講座」という名称を用います。

*講座の詳細については、以下の画像をクリックまたはタップしてご確認ください(加藤ゼミナールのページに遷移します)。

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1 講座を選択した理由

 ロースクール3年次前期の終わり頃に「司法試験の過去問をそろそろ本格的に取り組まなければ」と思っていましたが、一人では出題趣旨等を読み解き分析することはできないと考え、解説講座を受講しようと決めました。司法試験の過去問を解説している講座としては、秒速過去問講座以外に、ほか2つの司法試験過去問講座があったのでどの講座を購入するか非常に悩んでいました。

 最終的に秒速過去問講座を選択したのは、①ガイダンス動画で講座の特徴・講座の使い方を詳しく教えていただけたこと、②総論で各科目の書き方を詳細に解説されていること、③問題文・設問や誘導の読み方まで教えていただけること、④模範答案だけでなく中位答案も掲載されていることで現実的な合格答案を知れること、この4点によります。

2 使い方

⑴ 総論部分

 教材が届いてすぐ、総論の解説動画で各科目の書き方を学びました。司法試験の論文式試験は書き方でも差がつくため、総論の内容は何度も復習し一元化教材に反映させました。特に、憲法行政法、刑訴法は書き方でかなり差がつくため、試験本番までに何度も読み返しました。

⑵ 過去問の解説部分

 加藤先生がご自身のブログに書いてくださっていた過去問のランクづけを参考に、まず、Aランクの問題、次にBランク以下の問題でセレクト45*1に収録されているものを取り組みました。

 司法試験で実際に使われる答案用紙を使って2時間で答案を書いたのち、先生の解説動画を見つつメモをとり、先生が「ここは覚えてください」「ここの書き方は押さえておいてください」等と指示されることをマークしました。動画を見終わった後は、解説をもとに自分の書いた答案を自己添削しました。また、総論で学んだ書き方もできているかも確認しました。

 なお、目次がなかったので、「総論」「プレテスト」「H18」と対応する箇所・年度の最初の頁にインデックスをつけ、検索性を高めていました。

3 講座を選択して良かった点

⑴ 総論講座

 総論では、科目に共通する事項(行政法であれば処分性、原告適格、裁量)の書き方を各科目の過去問を取り組む前に解説していただけました。答案の書き方は、合格するためにかなり重要な要素であるにもかかわらず、あまりしっかりと解説がされることが少ないものです。しかし、この総論講座では、書き方についてかなり充実した解説がされるため、充実した答案を書けるようになりました。総論部分は一元化教材に反映する、コピーするなどして手元においておくとよいと思います。

⑵ 過去問の解説

 法律論にとどまらず、問題文の読み方、事実の捉え方、あてはめのポイントなどの答案作成技術までしっかり解説されていました。

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令和2年度憲法問題文(最新年度の解説・答案例はpdfで配布されます)
問題文の事実を使うための思考過程や設問の読み方まできっちり分析がされています。

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令和2年度商法解説冒頭
法律関係図をどう書くか、前提にすべき考え方は何か、出題趣旨・採点実感で言及されていることをどうメリハリをつけるか、といった点が講義で補足されます。
また、他の年度で出た論点等については、その年度がリファレンスとして言及されます。

 毎年解説動画が更新されているため、法改正への対応はもちろん、最新重要判例(たとえば、刑法では、同時傷害の特例についての平成28年判例に対応)にも対応した、最新で正確な解説が提供されます。秒速過去問講座2021では、コロナ禍の影響で司法試験の実施時期が遅れるなどの理由により、秒速過去問講座2020の解説動画が使われるという例外的措置がとられていましたが、令和2年の試験を踏まえて一部動画が差し代わっているなど、フォロー体制はしっかりしていました。

 テキストの解説部分は、定評のある基本書等をベースに記載されているため、信頼して読むことができます。また、試験で使うべき見解も明示されるため、自説の選択に迷うこともありませんでした。

⑶ 答案例

 模範答案、中位答案ともに1行40字を想定して答案例が書かれているので現実的な答案の分
量を知ることができました。

 模範答案だけでなく中位答案も示してくれるので合格の相場感を掴むことができました。中位答案は、妥協した書き方をしたものや緊急避難的な書き方をしたもの、受験生が本番でやりがちなミスを反映したものというような、現実的な答案になっているからです。なお、中位答案として想定されている順位は、50位〜700位です。

 加藤先生は当てはめを非常に上手く書かれるので、事実の評価のやり方、それぞれの事実を書く順序等々、模範答案の当てはめ部分は本当に参考になりました。なお、当てはめで使う事情については、積極事情や消極事情は<>で括り、積極なら+、消極なら-と答案例に記載していました。

 

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令和2年度商法答案例
実践的な答案の書き方や中位答案がなぜ中位答案なのかの説明がされています。

4 補足

 この講座は過去問をメインに解説したものであって、基礎知識を学ぶものではありませんので、短文事例では主要な論点を抽出でき規範定立・当てはめがある程度できること、主要な条文は引けることなど、基礎がある程度できた段階で、この講座を使うべきだと思います。

 最新判例が出たときなどは、その判例の解説や、答案でどう使うのかを説明した補講が配信されることがあります。

 私が受講した時のテキストは普通の基本書と同じようにくるみ綴じがされているものでしたが、今年度から、伊藤塾のテキストのように、バインダーに綴じられる26穴タイプのものも選択できるようになったとのことです。26穴タイプの方が使う分だけ持ち運べるので利便性が高まったと思います。また、論証集が付属するようになりました。

 下の画像をクリックまたはタップすると加藤ゼミナールのページに遷移しますので、講座の詳細を知りたい方はそちらでご確認ください。サンプル教材・動画も各科目掲載されています。

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秒速過去問講座のレビューは以上です。

さまざまな過去問講座がありますが、サンプル等もよく見て自分にあったものを選んでいただければと思います(個人的には秒速過去問講座を推したいところです笑)。

この記事が講座選択の参考になれば幸いです。

*1:資格スクエアで販売されていた、秒速過去問講座掲載の問題のうち特に重要な45問をセレクトしたもの

京都大学法科大学院 2020年度授業雑感(後期)

caliculus-bright.hatenablog.com

の続きです。

 

3年後期は履修の自由度が一気に上がりますので参考になればと思います。

 

繰り返しになって恐縮ですが、今年度はオンライン授業だったため来年度以降には妥当しない事項について述べていることがあります。また、教科書は変わる可能性があるので最新の科目概要をご確認くださるようお願い申し上げます。

 

*****

 

2 後期

⑴ 選択科目Ⅰ-近代日本の社会変動と法1-

この科目はいわゆる日本法制史というものです。

 

江戸末期から戦後の日本社会の変動とそれに伴う法の変容についての講義です。(学部のときも日本法制史を履修していたくらいには)私は日本史が好きで得意だったので完全興味で履修しました。面白かったです笑

 

今年度は、オンライン授業だったため、講義録の配布という形になりました。先生曰く、レジュメを読み上げるだけの録音に意味を見出せないとのことでした。個人的には好きな時間に講義録を読めばいいのでかなりありがたかったです。

 

成績評価は期末試験の成績のみで評価されます。

 

期末試験の内容と授業の内容はそこまでリンクしません。その場で大審院判決や現代語で書かれた資料などを読み解き、その内容を要約摘示する問題・読み解いた内容を踏まえて考察を展開する問題が出題されます。国語力(?)を試されている感が強かったです。

紙媒体であればなんでも参照しても構いませんが、引用のルールが厳しく定められていること、引用だけでは点数はつかないことには注意を要します。実際のところ、参考文献を引用しなければ解けないような問題ではないのですが。A+を狙うのであれば必要なのかもしれません。

 

⑵ 選択科目Ⅱ

ア 経済刑法

検察実務演習も担当されていた検察官の先生が担当されます。

 

基本的には、詐欺・横領・背任などの財産犯を事例問題で毎回取り扱っていく授業です。詐欺・横領などは財産犯の中でも難しい事項ですし、司法試験にも出題される分野なのでかなり勉強になります。 

また、特別背任罪不正競争防止法不正アクセス禁止法独占禁止法などの特別法が問題になる事案も扱います。

 

成績は期末試験のみで評価されます。試験範囲や出題方式は事前に詳細に教えていただけます。先生曰く、「普通に授業を受けてくれていれば解ける問題を出します」とのことでして、まさにそのような問題が出題されたと思いました。

 

ソクラテスもありますが、検察実務演習同様、優しいです。正しい思考過程に導いていただけます。

 

なお、教科書の指定はありません。特別法については、解説レジュメが事前に配布されます。

 

イ 競走政策と法

独禁法の先端的問題を扱いそうな授業ですが、実際は経済法選択者のための最後のブラッシュアップ的科目という位置付けだそうです。

 

経済法1・2で指定される教科書の編者の先生が担当されます。

 

教科書として、金井ほか『ケースブック独占禁止法〔第4版〕』(弘文堂)川濵ほか『論点解析 経済法〔第2版〕』(商事法務)が指定されます。いずれも使用します。ただ、全部使うわけではないので図書館や書庫でコピーしてもよいかと思います。なお、論点解析は経済法唯一の演習書なので経済法選択の方は購入されることをオススメいたします。編者の先生のうち2人が本学にいらっしゃるわけですので、内容についての質問をしやすいのも利点です。

 

授業内容は、ケースブック収録の判例・審決について報告するゼミ形式です。論点解析は起案の提出課題の素材として使用されます(もちろん、授業時間で、口頭による起案に対するコメントがあります)。

 

成績評価は平常点のみによります。

 

ウ ADRと法

和解や仲裁などの裁判外紛争手続について学びます。

 

担当は民事訴訟法総合も担当されている先生です。

 

教科書は、山本=山田『ADR仲裁法〔第2版〕』(日本評論社)が指定されます。授業の予習の際に使いますし、何よりも期末試験の勉強の際には必須です。

 

成績は、平常点30%、期末試験70%で評価されます。

 

普段の授業では、事前に予習課題が配布され、そこに記載されている設問に対する自分なりの答えを用意するという予習をしたうえで、授業に臨むことになります。授業では結構長くソクラテスが続きますが、こちらの意見を踏まえてリードしてくださるので、優しいですし考える練習になります。グループを作って課題に取り組むということもやりました。

 

普段の授業の他に、和解のロールプレイングが2回あります。このときには、ADRに精通されている弁護士の先生3名がお越しくださいます。ロールプレイング終了後には講評をいただけます。質問にも応じてくださいます。例年であれば、2回目のロールプレイング後に先生方を交えた飲み会があるそうなのですが、今年度は残念ながらありませんでした。

ロールプレイングは、当事者2人と仲裁人の3人で行う形式が1回、当事者2人にその代理人が1人ずつ付いて、仲裁人1人のもとに行う形式が1回という内訳になっています。今年度はオンライン授業でしたので、Zoomを用いてロールプレイングを行いました。現在ODR(ADRのオンライン版)の制度の構想があるようでして、その先駆けになるような経験をできたという意味では特別な経験ができたのだと思います。

 

和解について1回くらい経験を積む・学んでおくと実務に出たときに有用かもしれません。エクスターンシップでも和解の重要性について教えていただいたくらいです。裁判官でも実際に仲裁人的ポジションとして動くことも多いとのことですので、弁護士志望の方だけでなく、裁判官志望の方にもオススメできる授業だと思います。

 

なお、人数制限科目ですのでこの点にはご留意ください。といっても、例年10人以下ですので履修できないことはないかなと思います。

 

オ ファイナンスの法と理論(隔週)

この授業は東京4大事務所のパートナーの先生2人が担当されます。

1人は会社法の概略・組織再編・司法試験の過去問の授業(以下「司法試験等の授業」といいます)を、もう1人はガチガチのファイナンスの実務(以下「実務の授業」といいます)についての授業を展開されます。

 

教科書の指定はありません。成績評価は、平常点が30%、レポートが70%の割合でされます。レポートには、この授業の感想を記述するものと、問題に対して解答を作成するものの2つがあります。問題は毎年変わっているようです。

 

どちらの授業もソクラテスがされます。

 

司法試験等の授業では、班分けが事前にされます。その班で組織再編の課題や司法試験の過去問についてレポートを作って事前に提出します。提出されたレポートをたたき台に、作成した班のメンバーに対してソクラテスが展開されます。司法試験等の授業では、制度の趣旨に遡って、なぜこのような条文になっているのか、なぜ判例はこのように判示をしたのかという、根源的な問いかけがされることが多く、会社法の勉強にかなり役立ちます。会社法が苦手でもぜひとも履修していただきたい理由でもあります(ソクラテスは結構長くされますが笑)。実務家ならではの事実の見方・評価の仕方を教えていただけるのも大きなポイントです。

 

実務の授業は、会社が事業資金を集めるための方法に係る法的問題について考えていくという内容です。事前に予習課題が提示され、設問に対して広く回答を用意しておく必要があります。ソクラテス自体は優しいですが、割と長時間問答が続きます。民法会社法の勉強にもなります。金商法に関する問いもあったので、前期で金融サービス規制法を履修しておいてよかったなと感じた一幕がありました。今話題のFinTechについての授業もあったので、興味のある人にはオススメしたいと思います。

 

なお、この授業は人数制限科目で、毎年定員いっぱいまで履修者がいます。抽選になることも考えられます。履修を考える際にはご注意ください。

 

*****

 

2回にわたり、今年度の授業を振り返りました。大体思い返せるだけのことは書きました(項目の並べ方は雑になりました)。しかし、抜け落ちもあるかもしれませんので、気づいたら・思い出したらその都度加筆訂正することがあると思います(その際には、更新した箇所・更新日時等を明示しておくようにします)。

 

司法試験が迫ってきておりますので司法試験前はこれが最後の記事の投稿になります。また試験終了後に司法試験の感想などを記事にできたらなと思っております。

 

3年次に進級される方はこれが最後の1年です。まだ基幹科目が残っているため、いろいろ大変だと思います。コロナもどうなるかわかりませんが、身体に気をつけて日々頑張ってまいりましょう。

 

最後になりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました。この授業雑感がお役に立てれば幸いです。質問等ありましたらコメント欄にお願いいたします。

 

それではまた。

 

 

 

 

京都大学法科大学院 2020年度授業雑感(前期)

大変ご無沙汰しております。

 

まずはお詫びからです。前回の記事(京都大学法科大学院 2019年度授業雑感)で「海外エクスターンシップとエクスターンシップ1については後日記事にしたいと思います。」と述べたにもかかわらず、記事にしなかったことをお詫び申し上げます。この2科目について気になっていた方がいらっしゃったのであれば、ご期待に添えず本当に申し訳ありませんでした。

 

さて、この度、京大ローを無事修了することになりましたので、この1年間の授業について振り返っていきたいと思います。コロナ禍の影響により、1年間通じてオンライン授業でしたので、以下の振り返りの中には、来年度以降対面授業がされる場合には妥当しない情報もあるかと思いますが、履修の際の参考にしていただければ幸いです。

 

なお、使用教科書等は変更されることがありますので、各科目の最新の科目概要をご確認ください。

 

***** 

 

1 前期

⑴ 基幹科目

ア 公法総合3

この授業では、憲法の人権分野を学習します。

 

教科書は、初宿正典=大石眞編『憲法 Cases and Materials 人権〔第2版〕』を用います。

私のクラスでは、教科書記載の判例等を読んだ上で、先生お手製の設問に対する回答を用意するという形で予習をするように指示されました。設問の末尾には参考文献がリストアップされているので、それを参照しつつ回答することになります。

 

ソクラテスは優しめです。特に詰められることもありませんでした。

 

特徴的なのは、クラスで班分けがされ、予習課題とは別に与えられる課題について班で答案を作成し、提出するという作業が各班2回ずつあったことです。答案は、後日先生のコメントが付された上で、WLJの授業のお知らせに匿名で公表されます。他クラスの回答も見ることができます。なお、未修の方であれば、班とは別に、個人で作成した答案を提出することができます(もちろんコメントが付された上で、匿名で公表されます)。

 

ただ、久々に憲法を本格的に勉強したので、個人的にはかなりしんどい授業でした。試験もCOCOA類似のアプリを導入した際の憲法上の問題を論じさせるものでなかなか書きづらかった記憶があります。

 

以下の書籍を使い、定期試験の過去問を自主ゼミで解いてなんとか凌いだ、という感じです。

 

 ・新井誠ほか『憲法Ⅱ 人権』(日本評論社)

当時は初版しかありませんでした。薄くてわかりやすい良い本です。

 

 ・曽我部真裕ほか『憲法論点教室〔第2版〕』(日本評論社)

わからないことがあるときに使うと役に立ちます。内容は難しいですが…

 

 ・『憲法 事例問題起案の基礎』(岡山大学出版会)

答案の書き方がわからないという方に大変おすすめです。とりあえず無難な答案を書ける能力をつけたいときに最適です。かなり薄く、要件事実の新問研みたいなテイストです。

 

イ 民法総合3

この授業では、時効、保証契約、債権者代位権、詐害行為取消権、担保物権を学習します。

 

民法総合1、2と同様に、事例問題を解いていくというものです。ただし、問題は改正民法に対応したものを使います。

 

ソクラテスは優しいですが、内容自体が難しいのでキツいです。特に担保物権はかなり大変でした。債権者代位権と詐害行為取消権は条文を素読しておくとよいです。

 

担保物権に関しては、道垣内弘人『担保物権法〔第4版〕』(有斐閣)松岡久和『担保物権法』(日本評論社)が参考文献として推奨されますが、どちらか一冊あれば足ります。個人的には松岡先生の本がわかりやすくてよかったです(道垣内先生の本はかなり難しかったです…)。

 

期末試験も、これまでの民法総合と同様、かなりの難易度なのでしっかり勉強することが必要です。3L前期の鬼門といえるでしょう。

 

ウ 民事訴訟法総合2

この授業では、既判力、複雑訴訟を学習します。個人的にダントツにきつかった科目です笑

 

教科書は民事訴訟法総合1と同じです。先生もおっしゃっていましたが、既判力・複雑訴訟でも、ケースブックの設問でよくわからないものがまあまあ目立ちます。

 

特に多数当事者訴訟についてかなり詰め込まれます。私はこの分野が苦手だったのでソクラテスで何回かガチで詰められました… 

 

ロープラやロースクール演習でひたすら問題演習すること、まとめノートを作ることで、期末試験に対応するしかなかったです。

 

エ 刑事訴訟実務の基礎 

この授業では、捜査〜公訴〜公判〜判決までの手続(刑事訴訟法)、事実認定を学習します。裁判官・検察官の先生が担当されます。

 

民事訴訟実務の基礎と同様、提出課題があります。

 

教科書は、法務省法務総合研究所編『事件記録教材(第10号強盗致傷被疑事件)』(法曹会)、司法研修所刑事裁判教官室『プラクティス刑事裁判(平成30年版)』(法曹会)、同『プロシーディングス刑事裁判(平成30年版)」(法曹会)です。いずれも必要ですが、Amazonでは売っていませんでしたので、生協で購入するか、先輩から譲り受けるかしましょう。

 

基本的には刑事訴訟法の復習です。ただし、公判前整理手続には注意しましょう。条文をよく素読しておきましょう。

 

事実認定は実際に書いて練習するしかないです。定期試験の過去問や予備試験の法律実務基礎科目(刑事)の過去問を使います。

 

なお、予備校本としては、山本悠輝『刑事実務基礎の定石』(弘文堂)がわかりやすくてオススメです。予備試験を考えていらっしゃる方には持っておられる方も多いかと思います。

 

オ 民事法文書作成(通年科目)

民法→商法→民訴法→民法という順で、1年通じて計4回の即日起案があります(土曜日の午前中3時間)。起案の3週間後くらいに起案にコメントと評価(優秀起案、優秀起案候補、不合格起案候補、不合格起案の4つのいずれかに当てはまればその旨が記載されます。特に何もなければ普通の起案ということです。なお、今年度は、優秀起案、優秀起案候補、不合格起案候補の3段階評価でした)が付されて返却されます。弁護士の方が添削してくださいます。返却と同時期に解説授業もされます。

 

問題のレベルとしてはかなり難しい部類に入るかと思います。司法試験とはまた違った問題の出され方がされます。

 

今年度は起案も解説も全てオンラインだったので、起案の緊張感がなく残念でした。家でひとりでWordで起案していました。

 

成績評価は合否のみです。基本的に起案を出せば単位はもらえると思います(今年度は全員合格でした)。

 

⑵ 実務選択科目

ア 民事弁護実務演習

弁護士の先生が担当されます。

 

教科書の指定はありません。課題は事前に配布されます。

 

一般民事の事件について、訴状や答弁書、意見書などを事前に起案して提出し、授業では先生から起案のコメントをいただき、解説がされるというものです。

 

任意の課題につき、5回起案を提出すれば単位が授与されます(合否判定なのでGPAはありません)。起案は結構しんどいですが、かなり勉強になりました。

 

先生によって授業スタイルは変わりますが、私のクラスを担当されていた先生一人一人の起案にコメントをつけて返却してくださる形式でした。コメントは非常に勉強になりました。

 

弁護士としてはこう起案するのかということを知ることができるので、弁護士志望の方はもちろん裁判官・検察官志望の方でも履修をオススメします。

 

イ 検察実務演習

現役検察官の先生が担当される授業です。期末試験で成績評価がされます。

 

事前に事例問題が配布されるので、一通り予習した上で授業に臨むことになります。ソクラテスは優しいです。かなり面倒見の良い先生なので、気になったことはガンガン質問できる環境になっています。

 

基本的に刑事手続を学ぶので、刑事訴訟法の復習になります。刑事訴訟実務の基礎の勉強にもなるので一石二鳥な科目です。起訴状や論告求刑の書面などを書いて提出する課題があります。

 

特に教科書の指定はありません。刑事訴訟法の各分野ごとにまとめたレジュメをいただけるのですが、かなり詳細に、かつ、わかりやすく書かれているので、相当重宝しました。

 

また、模擬弁解録取や模擬決済、模擬証人尋問なども授業に組み込まれています。今年度はオンラインでの実施でしたが、来年度以降対面で実施される場合はより臨場感があってより面白くなると思います。

 

検察実務を実際に知る機会ですので、検察官志望の方はもちろん、そうでない方にも履修をオススメしたいと思います(ただし人数制限科目であることにはご留意ください)。

 

⑶ 選択科目Ⅱ

ア 消費者法

弁護士の先生が担当されます。消費者法にかなり精通された先生です。

 

平常点のみの評価です。

 

授業は事前に課題が与えられ、それに対する解答レジュメを作成し提出した上で、授業では解答の報告をした上で質疑応答に臨むというゼミ形式の授業です。司会も報告者が行います。

 

教科書が1冊指定されますが、あまり使いませんし、課題に取り組む場合には、(書庫が使えるのであれば)もっと詳しい参考文献を読むことになるので、買わなくてもよいと思います。

 

報告と質疑応答が終了した後は先生による特商法など課題に関わる法制度の解説があります。最新の法改正にも対応した簡潔なレジュメがもらえる点は良かったです。

 

ただ、今年度はオンラインでしたので、報告等がやりづらかったのが残念でした。結構楽しみにしていた科目だったので…

 

イ 経済法事例演習

弁護士の先生が担当されます。独禁法訴訟で企業側の代理人をされている先生です。最近ホットな事件(山陽マルナカ事件の東京高裁判決)の代理人をされているのを見つけて驚きました。

 

平常点のみで評価されます。

 

授業は事前に課題が与えられ、それに対する解答レジュメを作成し提出した上で、授業では解答の報告をするというゼミ形式の授業です。解答への質問に対する応答は先生が全て引き受けてくださいます。

 

経済法選択者の方であればとるべき授業のひとつです。

 

ウ 金融サービス規制法(隔週)

東京4大事務所のパートナー弁護士の先生が担当されます。

 

主に金融商品取引法を扱います。教科書の指定はありません。

 

4大事務所に行ってバリバリ企業法務をやりたいという方にはオススメの授業です。

 

成績評価は期末試験のみでされますが、紙媒体であれば何を参照しても構いません。金商法の入門としてオススメできるは次の2冊です。どちらも先生がオススメされていました。

 ・黒沼悦郎『金融商品取引法〔第7版〕』(日経文庫)

 ・近藤光男ほか『基礎から学べる金融商品取引法〔第4版〕』(弘文堂)

私は近藤先生の本を使っていました。図なども多用されておりビジュアル的にわかりやすかったからです。どちらか合う方を使用されればよいと思います。なお、新しい本も出ていますので、来年度の授業では別の本も紹介されるかもしれません。

 

金融商品取引法は改正がかなり多い法律であり、また、極めて条文が読みづらく、参入障壁の高い法分野です。4大事務所で金商法を専門的にされている先生から詳しいお話を聞けるので面白いと思います。条文の読み方から最新の問題点までを、詳しいレジュメを使って幅広く教えていただけます。

 

何回かゲストの先生が授業をされることもあります。証券訴訟等を専門にされている先生のお話を聞くことができます。

 

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 ひとまず前期はこのくらいにしまして、後期については次の記事にします。 

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 続きはこちら

caliculus-bright.hatenablog.com

京都大学法科大学院 2019年度授業雑感

ご無沙汰しております。

約1年ぶりの更新になりました。

頻繁に更新したいなと思いつつもなかなか更新できず、ようやく更新できました笑

個人的な話ではありますが3年次への進級が確定したので(?)、今回は京大ローの授業について取り上げたいと思います。

 

1 前期

  • 公法総合1
    公法総合1は、行政救済法を取り扱います。
    教材は、ケースブック行政法(弘文堂)を使用します。
    授業の進め方は、先生がレジュメに沿って講義し、ときおり事前に配布された予習課題を指名した学生に答えさせるというものです。質疑応答(以下「ソクラテス」といいます)は優しいですが、関連質問が飛んでくるのですぐには解放されません笑
    担当の先生は綿密に授業準備をされるので、非常にわかりやすく、かつ、司法試験にも活かせる内容だと思いました。

  • 民法総合1
    民法総合1は、契約法を中心に扱います。
    教材は、京大本といわれる、民法・総合事例演習(有斐閣)を使用します*1
    授業の進め方は、設問に沿って訴訟物、請求原因等々を答えさせるというものです。ソクラテスは優しい先生でした。なお、山本敬三先生ご担当のクラスは、相当ソクラテスで絞られるようです...
    授業で扱う事例問題は司法試験を凌駕する難易度なので、予習・復習、特に復習をしっかりしないと期末試験で大火傷をします。自主ゼミを組み事例に対する解答を起案して、その起案を検討しあうと有益だと思います。

  • 商法総合1
    商法総合1は、紛争解決編と呼ばれる分野を扱います。今まで勉強してきた馴染みのある論点を取り扱う問題が多いです。14回目の授業では手形法・小切手法を取り扱います。
    教材は、会社法事例演習教材(有斐閣)を使用します。
    授業の進め方は、設問ごとに学生に解答させるというものです。商法総合の先生は皆さんお優しいのでソクラテスはゆるふわです(もちろん、予習していないと厳しく指弾されます)。
    商法総合1の内容は司法試験的にかなり重要なものばかりなので、しっかり復習することをオススメします。教材の巻末に、自習用として、事例問題がついているので起案してみるのが有効です(巻末に軽い解説もあります)。

  • 刑法総合1
    刑法総合1は、刑法総論(共犯を除く)を扱います。
    教材は、ケースブック刑法(有斐閣)とオリジナルの事例問題を使います。ケースブック刑法は、設問の趣旨がよくわからない問題、学説に終始する問題が割とあるので、正直あまり役に立たないように思います...(実際に授業を担当されている先生の中には、この本をあまりよく思っていない先生もいらっしゃるようです)
    授業の進め方は、設問について学生に答えさせるというものです。ソクラテスは基本的に優しいのですが、たまに厳しく詰められることもあります。
    復習としては、ロー入試の対策と同様、論マス・重問等の短文事例問題を繰り返すことをオススメします。授業をしっかり聞いているだけでは期末試験で良い点は取れない傾向にあります。
    オリジナルの事例問題は答案を書き直すなどして復習すると非常に有益です。

  • 刑事訴訟法総合1
    刑事訴訟法総合1は、捜査法を扱います。
    教材は、ケースブック刑事訴訟法有斐閣)を使用します。刑法とは違い、練られた設問が多いです。難しい問題もそれなりにあります。
    授業の進め方は、指定された設問について解答させるというものです。ソクラテスは優しいです。リーガルクエストの著者のひとりである、堀江先生がこの授業を担当されていましたが、説明が非常にわかりやすく大変有益でした。
    復習としては、刑法と同様、やはり短文事例問題を繰り返すことをオススメします。刑事系は論パを適切かつ正確に貼り付けられるかが攻略の基本なので笑

  • 民事訴訟実務の基礎
    この授業は、要件事実、事実認定、民事執行・保全を扱います。要件事実に大部分が割かれます。
    教材は、新問題研究(法曹会)等の書籍、オリジナルの予習課題を使用します。要件事実については、いわゆる大島本と呼ばれる、大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎<上巻>」(民事法研究会)を使うことを強くオススメします。
    担当される先生方は、現役裁判官か裁判官経験者です。ソクラテスは割と長いです。
    要件事実の授業は、かなり高度なところまで扱うという意味で相当難しいので、予習復習は全力を尽くしてください(予備試験の民事実務基礎よりもはるかに難しいです)。前期の基幹科目の中で、単位を落とす人が最も多く出る科目なので「前期の鬼門」と言われるくらいです。
    この科目は、提出課題が課される点が特徴的です。この提出課題は難易度が高く、ある程度妥協しないと永遠に終わりません笑
    なお、入学前に要件事実を軽く一周しておくと授業が楽になります。

2 後期

  • 公法総合2
    この授業は、行政法総論と憲法訴訟で構成されます。
    使用教材は、ケースブック行政法です。憲法訴訟については、事前に教材がアップされます。
    授業の進め方は、設問に対する解答を答えさせるというもので、ソクラテスは基本的に優しいです。
    行政法総論に関しては司法試験の過去問を使っての勉強がオススメです。
    憲法訴訟に関しては、授業の復習をきっちりしましょう。憲法の基本書にはあまり詳しく取り上げられていないところまで深くやるからです(佐藤幸治日本国憲法論」でも対応が厳しいです)。

  • 民法総合2
    この授業は、物権(担保物権を除く)、不法行為をメインに扱います。
    使用教材・授業の進め方・復習の方法は民法総合1と同じです。
    令和2年度から潮見先生が担当されなくなるのが残念でなりません。

  • 商法総合2
    この授業は、紛争予防編と銘打って、種類株式といった細かい分野、組織再編等を扱います。司法試験にも出題されづらい分野も取り扱うので、馴染みのないものが多いです。
    使用教材・授業の進め方・復習の方法は商法総合1と同じです。

  • 民事訴訟法総合1
    この授業は、既判力・複雑訴訟を除いた範囲を取り扱います。
    使用教材は、ケースブック民事訴訟法(弘文堂)、ロースクール民事訴訟法(有斐閣)です。このような両刀使いをするロースクールは非常に珍しいそうです。
    授業の進め方は、設問に対する解答を答えさせるというもので、ソクラテスは基本的に優しいです(厳しい先生もいらっしゃいますが)。
    復習としては、あくまで個人的な例ですが、ロースクール演習民事訴訟法(法学書院)をメインに、補充的にロープラ(商事法務)を使っていました。

  • 刑法総合2
    この授業は、共犯と刑法各論を取り扱います。
    授業の進め方等は、刑法総合1と同様です。

  • 刑事訴訟法総合2
    この授業は、公訴・公判・証拠法・裁判・上訴再審を取り扱います。
    刑訴法の鬼門である、訴因変更と伝聞が待ち受けています笑
    伝聞については、後藤昭「伝聞法則に強くなる」(日本評論社)、工藤昇ほか「事例でわかる伝聞法則」(弘文堂)が有益です。お好きな方を一冊どうぞ。
    授業の進め方等は、刑事訴訟法総合1と同様です。

  • 法曹倫理
    この授業は、弁護士職務基本規定の解釈を中心に扱います。
    弁護士の先生方が担当されます。
    授業の進め方としては、4〜5人で一つの班を作り、班で事前に与えられた設問の解答を作成、授業で報告し、その解答について先生が講評し設問の解説をするというものです。
    使用教材は、弁護士倫理(慈学社)、解説 弁護士職務基本規定(日弁連)です。
    基幹科目にしては、比較的楽な授業です。しかし、法曹倫理は、弁護士として実務に出る際には非常に重要なので、よく勉強しておきましょう(予備試験にも法曹倫理は出題されます)。
    法曹倫理の単位を取得していることがエクスターンシップの履修要件になりますので、エクスターンシップに行こうと考えている方は単位を落とさないようにしましょう(もっとも、試験を受ければ単位は来ると思います)。

 

3 選択科目(私が履修したもののみ記載します)

  • 現代正義論(後期、選択科目Ⅰ)
    いわゆる法哲学の一部を取り扱います。
    面白いと感じるかどうかは人によります。
    試験は割と緩めです。試験範囲は絞ってくれます。なお、今年度の試験を受けた受講者は全員C以上の成績がつきました。

  • 労働法1(前期、選択科目Ⅱ)
    労働法全体を概説するというものです。講義形式で授業が進みます。
    試験問題は事例問題2問で構成されます。難易度は普通です。
    司法試験の選択科目を労働法にしようと思っている方は、水町勇一郎「労働法」(有斐閣)を使って授業を受けていることが多かったです。選択科目にしない場合は、森戸英幸「プレップ労働法」(弘文堂)が適度な分量かつ飽きさせない読み口なのでオススメします(私も使っていました)。

  • 経済法1(前期、選択科目Ⅱ)
  • 経済法2(後期、選択科目Ⅱ)
    経済法1、2を通じて独占禁止法全体を概観できます。講義形式で進みます。
    経済法1は基本的事項を概観し、経済法2は基本的事項を復習しながら高度な論点にも目を向けるという構成になっています。
    使用教材は、金井貴嗣ほか「独占禁止法」(弘文堂)です。この本に沿って授業が進みます。レジュメは原則としてありません。百選も使いますが、コピーで足りると思います。演習用の本としては、川濱昇ほか「論点解析 経済法」(商事法務)がオススメです。経済法選択の方にとって、上記書籍は三種の神器になると思います(とりわけ論点解析は必須です)。
    初めて経済法に触れるという方には、川濱昇ほか「有斐閣アルマ ベーシック経済法」(有斐閣今春に新しい版が出るそうです。)をオススメします。
    担当の先生は、授業がわかりやすいだけでなく、個別質問にも非常に懇切丁寧に対応してくださいます。様々な質問に対してたくさんのアドバイスをくださる非常にお優しい先生です。

京都大学法科大学院 2019年度授業雑感は以上です。参考にしていただければ幸いです。
海外エクスターンシップ、エクスターンシップ1については、後日記事にしたいと思います。

*1:令和2年度入学生からは京大本を使わないそうですが

ロー入試の流れ③(最終回)

 前回(ロー入試の流れ② )予告した通り、京大ロー入試について書いていきます。

 再三申し上げていますが、このページの情報は2018年当時のものであることにご留意ください。

4 京大ロー

*法学部3年次出願枠の場合は以下の記述と異なります。

⑴ 受験時期

  11月17日:憲法行政法 10時〜13時、民法・民訴法 14時30分〜17時30分

  11月18日:刑法・刑事訴訟法 10時〜13時、商法 14時30分〜16時30分

⑵ 受験科目

  七法全て

⑶    受験時間

  憲法行政法民法・民訴法、刑法・刑事訴訟法:各3時間

  商法:2時間

⑷   対策

ア 総論

 ご覧の通り、試験時間が非常に長いです。また、問題のレベルも相当高いです。

 時間には比較的余裕がありますので、しっかり答案構成を作成して書き始めるようにしましょう。

 問題のレベルが高く、何を書けばいいのかわからないこともあります。ですが、何か書いて最後まで諦めないことが大事です。仮に難しい問題が出たとしても、周りも同じ状況にあります。満足に書けなかったからといって過度に落ち込む必要はありません。次の時間に切り替えていきましょう。

 過去問演習をするにあたり、平成31年度入試以外の問題には出題趣旨が一切ありません。したがって、受験生がどれくらいの答案を書くのか、その相場を知るためにも自主ゼミを組んで問題検討に当たることをおすすめします。

 京大ロー入試においては、学部成績の配点が大きいです。GPAが3.5前後あれば学部成績的には安心して受験できるでしょう(もちろん、GPAが3.0前後でも論文試験で挽回して合格された方はいます)。学部成績についてですが、学部成績の評価は京大内部生と外部生で差がつけられているようです(確定的な情報ではないのですが)。GPAがある程度あっても論文試験でしっかり点を取らないと合格が遠のくことになりますので、外部生の方は注意して受験した方がよいでしょう。

 なお、貸与六法はデイリー六法です。

イ 各論

(ア) 憲法(100点)

 2題出題されます。人権分野から1題、統治分野から1題出題される傾向が続いています。

 人権分野に関しては、毎年13条、14条1項が絡む事例問題が出されることが多いように思います。もっとも、今年度は北九州税理士会事件、群馬司法書士会事件をモデルにしたような問題が出されました。

 人権分野の対策としては、これまでの各校同様、判例の論理を抑えつつ、憲法答案の書き方をある程度確立しておけば問題ないと思います。

 統治分野に関しては、毎年よくわからない問題が出ます。正直何が正解なのかはわかりません。出題された内容に関連する事項を書き綴っておけば無難に済ませられると思います。統治分野で差は付かないと考えておいたほうがよいでしょう。

 なお、京大憲法を代表する佐藤幸治先生の「日本国憲法論」を読んでおいたほうがよいと言われることがあります。余裕があれば読んでおいて損はないと思います。しかし、実際読まなくても合格できます。私は「日本国憲法論」を一切読まなかったのですが、合格できました。普段使っているテキストで十分だと思います。

(イ) 行政法(50点)

 1題出題されます。

 だいたい行政事件訴訟法からの出題が多いです。もちろん本案要件の検討で行政法総論の知識が要求されることもあります。

 2〜3年に1回くらいどう解答すべきかわからない問題も出ます。

 今年度は小問⑴で条例制定行為の処分性の有無、小問⑵で条例制定行為の結果影響を受ける者の原告適格の有無が問題となりました。有名判例がありますので、それに沿って解答していけば問題ないと思います。重箱の隅を突くような知識が問われる訳ではありませんので、基本的な判例をしっかり勉強しておけばよいでしょう。

 なお、私は試験本番で両方とも処分性の検討をしてしまいました。というのも、原告適格の問題かなと思ったのですが、試験問題に掲載されている参照条文が少なく、まさかこの条文数だけで原告適格を検討するのは無理だろうと思ったからです。しかし、一緒に受験した友達曰く、「貸与六法に参照すべき法令が掲載されていたから、それを見て原告適格を検討した。」ということで、原告適格を検討することができた問題だということがわかりました。貸与六法に参照すべき条文がないかしっかり探すべきだといえるでしょう。

 結果的に小問⑵は出題者が論じて欲しい思う点を落としてしまい、大きく点を失うことにはなりました。

(ウ) 民法(100点)

 事例問題が2問出題されます。

 平成31年度入試は改正民法ベースで出題され、採点も改正民法基準で行われています。

 第1問は総則分野からの出題でした。錯誤(改正民法95条)がメインの問題でした。

錯誤「取消し」(95条4項)後の第三者の保護について問われてもいました。きっちりと条文の勉強をしているかを問うもので、良い問題だと思いました。

 第2問は債権法分野、とりわけ、債権各論からの出題で、請負契約に関する法律関係の処理を求められました。正直なところ、かなり難しかったです。未だに正解筋がわかりません。今年度は改正民法での初めての出題となりましたので、受験生もあまり対策できていなかったようで、あまり差がつかなかったのではと思います。なお、第2問については、ロープラクティス(京大の潮見先生が編者をされています)に類問があったようです。

 改正民法の勉強ですが、現時点において各予備校も最近対応を始めたばかりです。既に予備校等で現行民法で講義を受けた方は、上でも言及したロープラクティスまたは民法演習サブノートを用いて問題演習を通じて改正民法の知識を入れておくとよいでしょう。私は民法演習サブノートを使っていたのですが、ロープラクティスの方が試験向きで良いかもしれません。

 なお、インプット形式の授業を行っている予備校は、伊藤塾とアガルートです(他にも行っている予備校があるかもしれませんが)。講義形式で教わりたいという方は予備校講座の受講も検討してもよいでしょう(伊藤塾の呉先生の改正民法講義はわかりやすかったです)。

(エ) 商法(100点)

 事例問題が2問出題されます。範囲は、商法・会社法・手形小切手法です。会社法分野から1題、手形小切手法分野から1題出題される傾向にあります。

 会社法は毎年素直な問題が出ています。おそらく合否を分けるのは会社法の出来が大きいかもしれません。平成31年度は組織再編から合併に関する問題が出題されました。

 手形小切手法はあまり差のつく分野ではありません。予備試験でくらいしか出題されないこともあり、受験生はそこまで対策していない、ないしは、対策が追いついていないからです。当日あまりできなくても気にしなくともよいでしょう。

 手形小切手法の勉強については、早川徹先生の教科書(新世社)が薄くてわかりやすくオススメです。問題演習については、答案例が出回っている旧司の問題がいいかもしれません。

(オ) 民事訴訟法(50点)

 1問出題されます。

 毎年掴みづらい問題が出ています。今年度は法定訴訟担当と任意的訴訟担当の具体例をあげ要件効果を説明を求められる問題でした。

 民事訴訟法はだいぶコケました(神戸ローに引き続き)。全くわからず思いついたことを書き殴るという荒唐無稽なことをしてしまい、基準点不到達による足切りを覚悟しました。結局合格できたので、周りもできなかったのだろうと思います。

 やはり民訴法は基礎概念の勉強が大事ですね(2回目)。

(カ) 刑法(100点)

 事例問題が2問出題されます。第1問は刑法総論メイン、第2問は刑法各論メインで出題されます。

 問題のレベルは高く、予備試験くらいあると思われます。短文事例問題のみならず、予備試験の問題も解いておくとよいでしょう。京大ロー入試の中で最も時間がタイトです。端的な処理ができるよう訓練しましょう。

(キ) 刑事訴訟法(50点)

 1問出題されます。

 平成30年度入試までは一行問題が出題されていたのですが、京大内の教員人事変更により作問担当の先生が変わられたのか、事例問題が出題されました。

 接見指定の問題でした。初めての事例問題出題だったからか、難易度は高くありませんでした。来年度以降の傾向・難易度については読めませんが、事例問題中心に練習を積めばよいと思います。なお、一行問題の対策としては、刑訴法の基礎概念を押さえた上で関連条文を引いて頭に入れておきましょう。

⑸ 受験当日等

 受験当日は、観光シーズンと重なるため、交通機関が混み合います。余裕を持って会場へ向かいましょう。

 試験開始前、終了後には、問題解答用紙の配布・回収のほか、貸与六法を棚から取り出したり収納したりする時間があります。そのため、試験と試験の間の休み時間は短くなり、あまり教材を見直す時間はありません。

 答案用紙は予備試験の答案用紙と似た形式をしています。

 なお、入試成績開示ですが、合否発表当日から申請の受付が始まるようです。申請方法は、京大ローの事務室窓口での申請か、郵送での申請となります(郵送による申請については京大ローに問い合わせてください)。窓口申請の場合、申請した日の翌月15日以降から開示を受けられます。開示結果を受け取る際には身分証明証を持参してください(平成31年度入試の情報です)。

5   おわりに

 3回にわたるロー入試の流れについての記事は以上です。

 わかりづらいところもあるかもしれませんが、 参考にしていただけると幸いです。

ロー入試の流れ②

あけましておめでとうございます、といってももう3月も終わる時期になってしまいました...笑

前回(ロー入試の流れ① )に引き続き、残りのロー入試の流れについて書いていきたいと思います。上記リンクの「はじめに」の通り、このページの情報は2018年当時のものです。2019年は状況が変わり、このページの内容が妥当しないことになることもあります。あらかじめご留意ください。

 

3 神戸大ロー

*おことわり:筆者は神戸ロー入試に関しては追加合格で終わってしまったので、対策面については小耳に挟む程度に聞いていただければと思います。失敗談については参考にしていただけると幸いです。

⑴ 受験時期

  11月3日

⑵    受験科目

  七法全て(3年次受験は科目が異なります。)

⑶    受験時間

  ・民法会社法:120分

  ・憲法刑法:120分

  ・行政法民訴法刑訴法:120分

⑷    対策

ア 総論

 受験時間を見ていただいたとおり、非常に時間がタイトです。問題は基礎的な知識を聞くものが多く、いかに素早く論証を展開して答案を作成するかが重要です。

 答案作成を素早くこなしていく練習が必要不可欠と言えるでしょう。

 また、答案用紙が横長で記入スペースが狭く、割と書きづらかった記憶があります。

 なお、貸与六法はポケット六法です。

イ 各論

(ア) 憲法

 試験範囲は憲法全範囲ですが、毎年人権分野からの出題となっています。

 平成31年度入試では、昨年世間を騒がせた医学部不正入試を題材としたものでした。憲法14条1項が問題となる事案です。

 例年13条か14条1項が問題となる事案が多いような気がします。また、時事ネタが題材とされることが多く、判例ズバリといった問題は少ないです。

 権利ごとの処理手順を確立しておけば困ることはないと思います(平成31年度入試の問題に関しては、何をどこまで書けばいいか正直わからなかったです。憲法で書き負けたことが追加合格に甘んじてしまった要因の一つかもしれません)。

(イ) 行政法

 行政法総論のみの出題となります(詳しい内訳は神戸ローの入試要項参照)。

 基礎的事項(撤回と取消しの違い、など)がよく聞かれます。行政法に関しては良い問題が多いと思います。

 平成31度入試では個別法解釈を絡めた事例問題が出題されました。素直に条文を読んでいけば解答の糸口を掴める問題だと思いました。

(ウ) 民法

 事例問題が2問出題されました。

 第1問は不動産物権変動と背信的悪意者の問題でした(同志社ローと同じ問題でした。また、阪大ローの民法でも同様の問題があったようです)。第2問は不法行為法の問題でした。

 基本的な問題で、民法に関しては典型的論点を素早く処理できれば十分です。

 なお、致命的なミスは犯してはいないものの、私は第2問の問題をあまり上手く処理できなかったような気がします。

(エ) 会社法

 事例問題が1問出題されました。平成31度入試は、設立と事業譲渡を絡めた問題だったと思います。

 だいたいオーソドックスな論点が出題されます。

 会社法は大きくコケてしまいました。開業準備行為の論点の処理を適当に流したこと、事業譲渡の定義を書けなかったことが今でも記憶に鮮明に残っています。

 そんなん会社法に限った話やないやん、と思われるかもしれませんが、伊藤塾等でAランクないし他の予備校でも繰り返し説明される論点については確実に頭に入れましょう...

(オ) 民事訴訟

 事例問題チックですが、実質的には説明問題です。

 平成31度入試では、既判力が出題されました。

 民事訴訟法でも何をどこまで書けば良いかわからず撃沈しました。論点の勉強ばかりしていて基礎概念にしっかり目を向けなかったことが敗因です。

(カ) 刑法

 説明問題が1問、事例問題が1問の構成です。配点については、説明問題:事例問題=40:60です。

 説明問題については、ある論点について2つの立場(主に判例通説と有力説)から論じさせるものです。有力説の知識が十分でなくともある程度触れられていれば大丈夫だと思います。

 事例問題は、オーソドックスな出題です。これまで使ってきた問題集の事例を素早く処理できるよう訓練しましょう。

(キ) 刑事訴訟法

 事例問題1問が出題されました。平成31度入試は、主に捜査法からの出題となりました。多論点型でとにかく忙しかったです。

 小問⑴か⑵の身柄拘束の問題は今でも処理に悩みます。小問⑶の接見指定の問題はオーソドックスな論点でした。

⑸ 受験当日について

 神大ローは朝早くから試験が始まり、遅くに終了します。総試験時間が長いため、体力的にも割と過酷な試験となります。体調は万全な状態にしておきましょう。

 試験会場まではバスで行く、ないし、歩いて行く方法があります。バスは間違えないようにしましょう(スキー場に連れて行かれてしまいます)。

 また、休憩時間毎に教室点検が行われますので、一定時間廊下(教室によっては外)で待機させられます。防寒具はしっかり身につけましょう(神戸ローがある六甲台は標高が高く、麓より寒いです)。

 その他、神戸大の周りにはコンビニがありません。受験当日は生協も閉まっています。受験会場に来る前に昼食等を用意しましょう。

⑹    追加合格について

 追加合格対象者かどうかは、不合格通知に記載されています。追加合格対象者のうち、どのグループにいるかも教えてもらえます(確実な情報ではありませんが、追加合格対象者は5グループに分けられているそうです)。

 12月上旬から、上のグループから順に追加合格の電話がかかってきます。

 私は第1グループに分類されていましたが、12月3日夕方に電話がかかってきました。上位グループに分類された場合、12月上旬の間はスマホ等を近くに置いておきましょう。

 

以上が神戸ローの情報です。何か参考になることがあれば幸いです。

次回は京大ローについてです。一番需要があるところだと思うので、気合いを入れて書きます笑