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法律(司法試験対策等)について綴っていきます

ロー入試の流れ③(最終回)

 前回(ロー入試の流れ② )予告した通り、京大ロー入試について書いていきます。

 再三申し上げていますが、このページの情報は2018年当時のものであることにご留意ください。

4 京大ロー

*法学部3年次出願枠の場合は以下の記述と異なります。

⑴ 受験時期

  11月17日:憲法行政法 10時〜13時、民法・民訴法 14時30分〜17時30分

  11月18日:刑法・刑事訴訟法 10時〜13時、商法 14時30分〜16時30分

⑵ 受験科目

  七法全て

⑶    受験時間

  憲法行政法民法・民訴法、刑法・刑事訴訟法:各3時間

  商法:2時間

⑷   対策

ア 総論

 ご覧の通り、試験時間が非常に長いです。また、問題のレベルも相当高いです。

 時間には比較的余裕がありますので、しっかり答案構成を作成して書き始めるようにしましょう。

 問題のレベルが高く、何を書けばいいのかわからないこともあります。ですが、何か書いて最後まで諦めないことが大事です。仮に難しい問題が出たとしても、周りも同じ状況にあります。満足に書けなかったからといって過度に落ち込む必要はありません。次の時間に切り替えていきましょう。

 過去問演習をするにあたり、平成31年度入試以外の問題には出題趣旨が一切ありません。したがって、受験生がどれくらいの答案を書くのか、その相場を知るためにも自主ゼミを組んで問題検討に当たることをおすすめします。

 京大ロー入試においては、学部成績の配点が大きいです。GPAが3.5前後あれば学部成績的には安心して受験できるでしょう(もちろん、GPAが3.0前後でも論文試験で挽回して合格された方はいます)。学部成績についてですが、学部成績の評価は京大内部生と外部生で差がつけられているようです(確定的な情報ではないのですが)。GPAがある程度あっても論文試験でしっかり点を取らないと合格が遠のくことになりますので、外部生の方は注意して受験した方がよいでしょう。

 なお、貸与六法はデイリー六法です。

イ 各論

(ア) 憲法(100点)

 2題出題されます。人権分野から1題、統治分野から1題出題される傾向が続いています。

 人権分野に関しては、毎年13条、14条1項が絡む事例問題が出されることが多いように思います。もっとも、今年度は北九州税理士会事件、群馬司法書士会事件をモデルにしたような問題が出されました。

 人権分野の対策としては、これまでの各校同様、判例の論理を抑えつつ、憲法答案の書き方をある程度確立しておけば問題ないと思います。

 統治分野に関しては、毎年よくわからない問題が出ます。正直何が正解なのかはわかりません。出題された内容に関連する事項を書き綴っておけば無難に済ませられると思います。統治分野で差は付かないと考えておいたほうがよいでしょう。

 なお、京大憲法を代表する佐藤幸治先生の「日本国憲法論」を読んでおいたほうがよいと言われることがあります。余裕があれば読んでおいて損はないと思います。しかし、実際読まなくても合格できます。私は「日本国憲法論」を一切読まなかったのですが、合格できました。普段使っているテキストで十分だと思います。

(イ) 行政法(50点)

 1題出題されます。

 だいたい行政事件訴訟法からの出題が多いです。もちろん本案要件の検討で行政法総論の知識が要求されることもあります。

 2〜3年に1回くらいどう解答すべきかわからない問題も出ます。

 今年度は小問⑴で条例制定行為の処分性の有無、小問⑵で条例制定行為の結果影響を受ける者の原告適格の有無が問題となりました。有名判例がありますので、それに沿って解答していけば問題ないと思います。重箱の隅を突くような知識が問われる訳ではありませんので、基本的な判例をしっかり勉強しておけばよいでしょう。

 なお、私は試験本番で両方とも処分性の検討をしてしまいました。というのも、原告適格の問題かなと思ったのですが、試験問題に掲載されている参照条文が少なく、まさかこの条文数だけで原告適格を検討するのは無理だろうと思ったからです。しかし、一緒に受験した友達曰く、「貸与六法に参照すべき法令が掲載されていたから、それを見て原告適格を検討した。」ということで、原告適格を検討することができた問題だということがわかりました。貸与六法に参照すべき条文がないかしっかり探すべきだといえるでしょう。

 結果的に小問⑵は出題者が論じて欲しい思う点を落としてしまい、大きく点を失うことにはなりました。

(ウ) 民法(100点)

 事例問題が2問出題されます。

 平成31年度入試は改正民法ベースで出題され、採点も改正民法基準で行われています。

 第1問は総則分野からの出題でした。錯誤(改正民法95条)がメインの問題でした。

錯誤「取消し」(95条4項)後の第三者の保護について問われてもいました。きっちりと条文の勉強をしているかを問うもので、良い問題だと思いました。

 第2問は債権法分野、とりわけ、債権各論からの出題で、請負契約に関する法律関係の処理を求められました。正直なところ、かなり難しかったです。未だに正解筋がわかりません。今年度は改正民法での初めての出題となりましたので、受験生もあまり対策できていなかったようで、あまり差がつかなかったのではと思います。なお、第2問については、ロープラクティス(京大の潮見先生が編者をされています)に類問があったようです。

 改正民法の勉強ですが、現時点において各予備校も最近対応を始めたばかりです。既に予備校等で現行民法で講義を受けた方は、上でも言及したロープラクティスまたは民法演習サブノートを用いて問題演習を通じて改正民法の知識を入れておくとよいでしょう。私は民法演習サブノートを使っていたのですが、ロープラクティスの方が試験向きで良いかもしれません。

 なお、インプット形式の授業を行っている予備校は、伊藤塾とアガルートです(他にも行っている予備校があるかもしれませんが)。講義形式で教わりたいという方は予備校講座の受講も検討してもよいでしょう(伊藤塾の呉先生の改正民法講義はわかりやすかったです)。

(エ) 商法(100点)

 事例問題が2問出題されます。範囲は、商法・会社法・手形小切手法です。会社法分野から1題、手形小切手法分野から1題出題される傾向にあります。

 会社法は毎年素直な問題が出ています。おそらく合否を分けるのは会社法の出来が大きいかもしれません。平成31年度は組織再編から合併に関する問題が出題されました。

 手形小切手法はあまり差のつく分野ではありません。予備試験でくらいしか出題されないこともあり、受験生はそこまで対策していない、ないしは、対策が追いついていないからです。当日あまりできなくても気にしなくともよいでしょう。

 手形小切手法の勉強については、早川徹先生の教科書(新世社)が薄くてわかりやすくオススメです。問題演習については、答案例が出回っている旧司の問題がいいかもしれません。

(オ) 民事訴訟法(50点)

 1問出題されます。

 毎年掴みづらい問題が出ています。今年度は法定訴訟担当と任意的訴訟担当の具体例をあげ要件効果を説明を求められる問題でした。

 民事訴訟法はだいぶコケました(神戸ローに引き続き)。全くわからず思いついたことを書き殴るという荒唐無稽なことをしてしまい、基準点不到達による足切りを覚悟しました。結局合格できたので、周りもできなかったのだろうと思います。

 やはり民訴法は基礎概念の勉強が大事ですね(2回目)。

(カ) 刑法(100点)

 事例問題が2問出題されます。第1問は刑法総論メイン、第2問は刑法各論メインで出題されます。

 問題のレベルは高く、予備試験くらいあると思われます。短文事例問題のみならず、予備試験の問題も解いておくとよいでしょう。京大ロー入試の中で最も時間がタイトです。端的な処理ができるよう訓練しましょう。

(キ) 刑事訴訟法(50点)

 1問出題されます。

 平成30年度入試までは一行問題が出題されていたのですが、京大内の教員人事変更により作問担当の先生が変わられたのか、事例問題が出題されました。

 接見指定の問題でした。初めての事例問題出題だったからか、難易度は高くありませんでした。来年度以降の傾向・難易度については読めませんが、事例問題中心に練習を積めばよいと思います。なお、一行問題の対策としては、刑訴法の基礎概念を押さえた上で関連条文を引いて頭に入れておきましょう。

⑸ 受験当日等

 受験当日は、観光シーズンと重なるため、交通機関が混み合います。余裕を持って会場へ向かいましょう。

 試験開始前、終了後には、問題解答用紙の配布・回収のほか、貸与六法を棚から取り出したり収納したりする時間があります。そのため、試験と試験の間の休み時間は短くなり、あまり教材を見直す時間はありません。

 答案用紙は予備試験の答案用紙と似た形式をしています。

 なお、入試成績開示ですが、合否発表当日から申請の受付が始まるようです。申請方法は、京大ローの事務室窓口での申請か、郵送での申請となります(郵送による申請については京大ローに問い合わせてください)。窓口申請の場合、申請した日の翌月15日以降から開示を受けられます。開示結果を受け取る際には身分証明証を持参してください(平成31年度入試の情報です)。

5   おわりに

 3回にわたるロー入試の流れについての記事は以上です。

 わかりづらいところもあるかもしれませんが、 参考にしていただけると幸いです。