LS生は日々進化中!

法律(司法試験対策等)について綴っていきます

京都大学法科大学院 2020年度授業雑感(前期)

大変ご無沙汰しております。

 

まずはお詫びからです。前回の記事(京都大学法科大学院 2019年度授業雑感)で「海外エクスターンシップとエクスターンシップ1については後日記事にしたいと思います。」と述べたにもかかわらず、記事にしなかったことをお詫び申し上げます。この2科目について気になっていた方がいらっしゃったのであれば、ご期待に添えず本当に申し訳ありませんでした。

 

さて、この度、京大ローを無事修了することになりましたので、この1年間の授業について振り返っていきたいと思います。コロナ禍の影響により、1年間通じてオンライン授業でしたので、以下の振り返りの中には、来年度以降対面授業がされる場合には妥当しない情報もあるかと思いますが、履修の際の参考にしていただければ幸いです。

 

なお、使用教科書等は変更されることがありますので、各科目の最新の科目概要をご確認ください。

 

***** 

 

1 前期

⑴ 基幹科目

ア 公法総合3

この授業では、憲法の人権分野を学習します。

 

教科書は、初宿正典=大石眞編『憲法 Cases and Materials 人権〔第2版〕』を用います。

私のクラスでは、教科書記載の判例等を読んだ上で、先生お手製の設問に対する回答を用意するという形で予習をするように指示されました。設問の末尾には参考文献がリストアップされているので、それを参照しつつ回答することになります。

 

ソクラテスは優しめです。特に詰められることもありませんでした。

 

特徴的なのは、クラスで班分けがされ、予習課題とは別に与えられる課題について班で答案を作成し、提出するという作業が各班2回ずつあったことです。答案は、後日先生のコメントが付された上で、WLJの授業のお知らせに匿名で公表されます。他クラスの回答も見ることができます。なお、未修の方であれば、班とは別に、個人で作成した答案を提出することができます(もちろんコメントが付された上で、匿名で公表されます)。

 

ただ、久々に憲法を本格的に勉強したので、個人的にはかなりしんどい授業でした。試験もCOCOA類似のアプリを導入した際の憲法上の問題を論じさせるものでなかなか書きづらかった記憶があります。

 

以下の書籍を使い、定期試験の過去問を自主ゼミで解いてなんとか凌いだ、という感じです。

 

 ・新井誠ほか『憲法Ⅱ 人権』(日本評論社)

当時は初版しかありませんでした。薄くてわかりやすい良い本です。

 

 ・曽我部真裕ほか『憲法論点教室〔第2版〕』(日本評論社)

わからないことがあるときに使うと役に立ちます。内容は難しいですが…

 

 ・『憲法 事例問題起案の基礎』(岡山大学出版会)

答案の書き方がわからないという方に大変おすすめです。とりあえず無難な答案を書ける能力をつけたいときに最適です。かなり薄く、要件事実の新問研みたいなテイストです。

 

イ 民法総合3

この授業では、時効、保証契約、債権者代位権、詐害行為取消権、担保物権を学習します。

 

民法総合1、2と同様に、事例問題を解いていくというものです。ただし、問題は改正民法に対応したものを使います。

 

ソクラテスは優しいですが、内容自体が難しいのでキツいです。特に担保物権はかなり大変でした。債権者代位権と詐害行為取消権は条文を素読しておくとよいです。

 

担保物権に関しては、道垣内弘人『担保物権法〔第4版〕』(有斐閣)松岡久和『担保物権法』(日本評論社)が参考文献として推奨されますが、どちらか一冊あれば足ります。個人的には松岡先生の本がわかりやすくてよかったです(道垣内先生の本はかなり難しかったです…)。

 

期末試験も、これまでの民法総合と同様、かなりの難易度なのでしっかり勉強することが必要です。3L前期の鬼門といえるでしょう。

 

ウ 民事訴訟法総合2

この授業では、既判力、複雑訴訟を学習します。個人的にダントツにきつかった科目です笑

 

教科書は民事訴訟法総合1と同じです。先生もおっしゃっていましたが、既判力・複雑訴訟でも、ケースブックの設問でよくわからないものがまあまあ目立ちます。

 

特に多数当事者訴訟についてかなり詰め込まれます。私はこの分野が苦手だったのでソクラテスで何回かガチで詰められました… 

 

ロープラやロースクール演習でひたすら問題演習すること、まとめノートを作ることで、期末試験に対応するしかなかったです。

 

エ 刑事訴訟実務の基礎 

この授業では、捜査〜公訴〜公判〜判決までの手続(刑事訴訟法)、事実認定を学習します。裁判官・検察官の先生が担当されます。

 

民事訴訟実務の基礎と同様、提出課題があります。

 

教科書は、法務省法務総合研究所編『事件記録教材(第10号強盗致傷被疑事件)』(法曹会)、司法研修所刑事裁判教官室『プラクティス刑事裁判(平成30年版)』(法曹会)、同『プロシーディングス刑事裁判(平成30年版)」(法曹会)です。いずれも必要ですが、Amazonでは売っていませんでしたので、生協で購入するか、先輩から譲り受けるかしましょう。

 

基本的には刑事訴訟法の復習です。ただし、公判前整理手続には注意しましょう。条文をよく素読しておきましょう。

 

事実認定は実際に書いて練習するしかないです。定期試験の過去問や予備試験の法律実務基礎科目(刑事)の過去問を使います。

 

なお、予備校本としては、山本悠輝『刑事実務基礎の定石』(弘文堂)がわかりやすくてオススメです。予備試験を考えていらっしゃる方には持っておられる方も多いかと思います。

 

オ 民事法文書作成(通年科目)

民法→商法→民訴法→民法という順で、1年通じて計4回の即日起案があります(土曜日の午前中3時間)。起案の3週間後くらいに起案にコメントと評価(優秀起案、優秀起案候補、不合格起案候補、不合格起案の4つのいずれかに当てはまればその旨が記載されます。特に何もなければ普通の起案ということです。なお、今年度は、優秀起案、優秀起案候補、不合格起案候補の3段階評価でした)が付されて返却されます。弁護士の方が添削してくださいます。返却と同時期に解説授業もされます。

 

問題のレベルとしてはかなり難しい部類に入るかと思います。司法試験とはまた違った問題の出され方がされます。

 

今年度は起案も解説も全てオンラインだったので、起案の緊張感がなく残念でした。家でひとりでWordで起案していました。

 

成績評価は合否のみです。基本的に起案を出せば単位はもらえると思います(今年度は全員合格でした)。

 

⑵ 実務選択科目

ア 民事弁護実務演習

弁護士の先生が担当されます。

 

教科書の指定はありません。課題は事前に配布されます。

 

一般民事の事件について、訴状や答弁書、意見書などを事前に起案して提出し、授業では先生から起案のコメントをいただき、解説がされるというものです。

 

任意の課題につき、5回起案を提出すれば単位が授与されます(合否判定なのでGPAはありません)。起案は結構しんどいですが、かなり勉強になりました。

 

先生によって授業スタイルは変わりますが、私のクラスを担当されていた先生一人一人の起案にコメントをつけて返却してくださる形式でした。コメントは非常に勉強になりました。

 

弁護士としてはこう起案するのかということを知ることができるので、弁護士志望の方はもちろん裁判官・検察官志望の方でも履修をオススメします。

 

イ 検察実務演習

現役検察官の先生が担当される授業です。期末試験で成績評価がされます。

 

事前に事例問題が配布されるので、一通り予習した上で授業に臨むことになります。ソクラテスは優しいです。かなり面倒見の良い先生なので、気になったことはガンガン質問できる環境になっています。

 

基本的に刑事手続を学ぶので、刑事訴訟法の復習になります。刑事訴訟実務の基礎の勉強にもなるので一石二鳥な科目です。起訴状や論告求刑の書面などを書いて提出する課題があります。

 

特に教科書の指定はありません。刑事訴訟法の各分野ごとにまとめたレジュメをいただけるのですが、かなり詳細に、かつ、わかりやすく書かれているので、相当重宝しました。

 

また、模擬弁解録取や模擬決済、模擬証人尋問なども授業に組み込まれています。今年度はオンラインでの実施でしたが、来年度以降対面で実施される場合はより臨場感があってより面白くなると思います。

 

検察実務を実際に知る機会ですので、検察官志望の方はもちろん、そうでない方にも履修をオススメしたいと思います(ただし人数制限科目であることにはご留意ください)。

 

⑶ 選択科目Ⅱ

ア 消費者法

弁護士の先生が担当されます。消費者法にかなり精通された先生です。

 

平常点のみの評価です。

 

授業は事前に課題が与えられ、それに対する解答レジュメを作成し提出した上で、授業では解答の報告をした上で質疑応答に臨むというゼミ形式の授業です。司会も報告者が行います。

 

教科書が1冊指定されますが、あまり使いませんし、課題に取り組む場合には、(書庫が使えるのであれば)もっと詳しい参考文献を読むことになるので、買わなくてもよいと思います。

 

報告と質疑応答が終了した後は先生による特商法など課題に関わる法制度の解説があります。最新の法改正にも対応した簡潔なレジュメがもらえる点は良かったです。

 

ただ、今年度はオンラインでしたので、報告等がやりづらかったのが残念でした。結構楽しみにしていた科目だったので…

 

イ 経済法事例演習

弁護士の先生が担当されます。独禁法訴訟で企業側の代理人をされている先生です。最近ホットな事件(山陽マルナカ事件の東京高裁判決)の代理人をされているのを見つけて驚きました。

 

平常点のみで評価されます。

 

授業は事前に課題が与えられ、それに対する解答レジュメを作成し提出した上で、授業では解答の報告をするというゼミ形式の授業です。解答への質問に対する応答は先生が全て引き受けてくださいます。

 

経済法選択者の方であればとるべき授業のひとつです。

 

ウ 金融サービス規制法(隔週)

東京4大事務所のパートナー弁護士の先生が担当されます。

 

主に金融商品取引法を扱います。教科書の指定はありません。

 

4大事務所に行ってバリバリ企業法務をやりたいという方にはオススメの授業です。

 

成績評価は期末試験のみでされますが、紙媒体であれば何を参照しても構いません。金商法の入門としてオススメできるは次の2冊です。どちらも先生がオススメされていました。

 ・黒沼悦郎『金融商品取引法〔第7版〕』(日経文庫)

 ・近藤光男ほか『基礎から学べる金融商品取引法〔第4版〕』(弘文堂)

私は近藤先生の本を使っていました。図なども多用されておりビジュアル的にわかりやすかったからです。どちらか合う方を使用されればよいと思います。なお、新しい本も出ていますので、来年度の授業では別の本も紹介されるかもしれません。

 

金融商品取引法は改正がかなり多い法律であり、また、極めて条文が読みづらく、参入障壁の高い法分野です。4大事務所で金商法を専門的にされている先生から詳しいお話を聞けるので面白いと思います。条文の読み方から最新の問題点までを、詳しいレジュメを使って幅広く教えていただけます。

 

何回かゲストの先生が授業をされることもあります。証券訴訟等を専門にされている先生のお話を聞くことができます。

 

*****

 ひとまず前期はこのくらいにしまして、後期については次の記事にします。 

*****

 続きはこちら

caliculus-bright.hatenablog.com