LS生は日々進化中!

法律(司法試験対策等)について綴っていきます

京都大学法科大学院 2020年度授業雑感(後期)

caliculus-bright.hatenablog.com

の続きです。

 

3年後期は履修の自由度が一気に上がりますので参考になればと思います。

 

繰り返しになって恐縮ですが、今年度はオンライン授業だったため来年度以降には妥当しない事項について述べていることがあります。また、教科書は変わる可能性があるので最新の科目概要をご確認くださるようお願い申し上げます。

 

*****

 

2 後期

⑴ 選択科目Ⅰ-近代日本の社会変動と法1-

この科目はいわゆる日本法制史というものです。

 

江戸末期から戦後の日本社会の変動とそれに伴う法の変容についての講義です。(学部のときも日本法制史を履修していたくらいには)私は日本史が好きで得意だったので完全興味で履修しました。面白かったです笑

 

今年度は、オンライン授業だったため、講義録の配布という形になりました。先生曰く、レジュメを読み上げるだけの録音に意味を見出せないとのことでした。個人的には好きな時間に講義録を読めばいいのでかなりありがたかったです。

 

成績評価は期末試験の成績のみで評価されます。

 

期末試験の内容と授業の内容はそこまでリンクしません。その場で大審院判決や現代語で書かれた資料などを読み解き、その内容を要約摘示する問題・読み解いた内容を踏まえて考察を展開する問題が出題されます。国語力(?)を試されている感が強かったです。

紙媒体であればなんでも参照しても構いませんが、引用のルールが厳しく定められていること、引用だけでは点数はつかないことには注意を要します。実際のところ、参考文献を引用しなければ解けないような問題ではないのですが。A+を狙うのであれば必要なのかもしれません。

 

⑵ 選択科目Ⅱ

ア 経済刑法

検察実務演習も担当されていた検察官の先生が担当されます。

 

基本的には、詐欺・横領・背任などの財産犯を事例問題で毎回取り扱っていく授業です。詐欺・横領などは財産犯の中でも難しい事項ですし、司法試験にも出題される分野なのでかなり勉強になります。 

また、特別背任罪不正競争防止法不正アクセス禁止法独占禁止法などの特別法が問題になる事案も扱います。

 

成績は期末試験のみで評価されます。試験範囲や出題方式は事前に詳細に教えていただけます。先生曰く、「普通に授業を受けてくれていれば解ける問題を出します」とのことでして、まさにそのような問題が出題されたと思いました。

 

ソクラテスもありますが、検察実務演習同様、優しいです。正しい思考過程に導いていただけます。

 

なお、教科書の指定はありません。特別法については、解説レジュメが事前に配布されます。

 

イ 競走政策と法

独禁法の先端的問題を扱いそうな授業ですが、実際は経済法選択者のための最後のブラッシュアップ的科目という位置付けだそうです。

 

経済法1・2で指定される教科書の編者の先生が担当されます。

 

教科書として、金井ほか『ケースブック独占禁止法〔第4版〕』(弘文堂)川濵ほか『論点解析 経済法〔第2版〕』(商事法務)が指定されます。いずれも使用します。ただ、全部使うわけではないので図書館や書庫でコピーしてもよいかと思います。なお、論点解析は経済法唯一の演習書なので経済法選択の方は購入されることをオススメいたします。編者の先生のうち2人が本学にいらっしゃるわけですので、内容についての質問をしやすいのも利点です。

 

授業内容は、ケースブック収録の判例・審決について報告するゼミ形式です。論点解析は起案の提出課題の素材として使用されます(もちろん、授業時間で、口頭による起案に対するコメントがあります)。

 

成績評価は平常点のみによります。

 

ウ ADRと法

和解や仲裁などの裁判外紛争手続について学びます。

 

担当は民事訴訟法総合も担当されている先生です。

 

教科書は、山本=山田『ADR仲裁法〔第2版〕』(日本評論社)が指定されます。授業の予習の際に使いますし、何よりも期末試験の勉強の際には必須です。

 

成績は、平常点30%、期末試験70%で評価されます。

 

普段の授業では、事前に予習課題が配布され、そこに記載されている設問に対する自分なりの答えを用意するという予習をしたうえで、授業に臨むことになります。授業では結構長くソクラテスが続きますが、こちらの意見を踏まえてリードしてくださるので、優しいですし考える練習になります。グループを作って課題に取り組むということもやりました。

 

普段の授業の他に、和解のロールプレイングが2回あります。このときには、ADRに精通されている弁護士の先生3名がお越しくださいます。ロールプレイング終了後には講評をいただけます。質問にも応じてくださいます。例年であれば、2回目のロールプレイング後に先生方を交えた飲み会があるそうなのですが、今年度は残念ながらありませんでした。

ロールプレイングは、当事者2人と仲裁人の3人で行う形式が1回、当事者2人にその代理人が1人ずつ付いて、仲裁人1人のもとに行う形式が1回という内訳になっています。今年度はオンライン授業でしたので、Zoomを用いてロールプレイングを行いました。現在ODR(ADRのオンライン版)の制度の構想があるようでして、その先駆けになるような経験をできたという意味では特別な経験ができたのだと思います。

 

和解について1回くらい経験を積む・学んでおくと実務に出たときに有用かもしれません。エクスターンシップでも和解の重要性について教えていただいたくらいです。裁判官でも実際に仲裁人的ポジションとして動くことも多いとのことですので、弁護士志望の方だけでなく、裁判官志望の方にもオススメできる授業だと思います。

 

なお、人数制限科目ですのでこの点にはご留意ください。といっても、例年10人以下ですので履修できないことはないかなと思います。

 

オ ファイナンスの法と理論(隔週)

この授業は東京4大事務所のパートナーの先生2人が担当されます。

1人は会社法の概略・組織再編・司法試験の過去問の授業(以下「司法試験等の授業」といいます)を、もう1人はガチガチのファイナンスの実務(以下「実務の授業」といいます)についての授業を展開されます。

 

教科書の指定はありません。成績評価は、平常点が30%、レポートが70%の割合でされます。レポートには、この授業の感想を記述するものと、問題に対して解答を作成するものの2つがあります。問題は毎年変わっているようです。

 

どちらの授業もソクラテスがされます。

 

司法試験等の授業では、班分けが事前にされます。その班で組織再編の課題や司法試験の過去問についてレポートを作って事前に提出します。提出されたレポートをたたき台に、作成した班のメンバーに対してソクラテスが展開されます。司法試験等の授業では、制度の趣旨に遡って、なぜこのような条文になっているのか、なぜ判例はこのように判示をしたのかという、根源的な問いかけがされることが多く、会社法の勉強にかなり役立ちます。会社法が苦手でもぜひとも履修していただきたい理由でもあります(ソクラテスは結構長くされますが笑)。実務家ならではの事実の見方・評価の仕方を教えていただけるのも大きなポイントです。

 

実務の授業は、会社が事業資金を集めるための方法に係る法的問題について考えていくという内容です。事前に予習課題が提示され、設問に対して広く回答を用意しておく必要があります。ソクラテス自体は優しいですが、割と長時間問答が続きます。民法会社法の勉強にもなります。金商法に関する問いもあったので、前期で金融サービス規制法を履修しておいてよかったなと感じた一幕がありました。今話題のFinTechについての授業もあったので、興味のある人にはオススメしたいと思います。

 

なお、この授業は人数制限科目で、毎年定員いっぱいまで履修者がいます。抽選になることも考えられます。履修を考える際にはご注意ください。

 

*****

 

2回にわたり、今年度の授業を振り返りました。大体思い返せるだけのことは書きました(項目の並べ方は雑になりました)。しかし、抜け落ちもあるかもしれませんので、気づいたら・思い出したらその都度加筆訂正することがあると思います(その際には、更新した箇所・更新日時等を明示しておくようにします)。

 

司法試験が迫ってきておりますので司法試験前はこれが最後の記事の投稿になります。また試験終了後に司法試験の感想などを記事にできたらなと思っております。

 

3年次に進級される方はこれが最後の1年です。まだ基幹科目が残っているため、いろいろ大変だと思います。コロナもどうなるかわかりませんが、身体に気をつけて日々頑張ってまいりましょう。

 

最後になりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました。この授業雑感がお役に立てれば幸いです。質問等ありましたらコメント欄にお願いいたします。

 

それではまた。