LS生は日々進化中!

法律(司法試験対策等)について綴っていきます

京都大学法科大学院 2019年度授業雑感

ご無沙汰しております。

約1年ぶりの更新になりました。

頻繁に更新したいなと思いつつもなかなか更新できず、ようやく更新できました笑

個人的な話ではありますが3年次への進級が確定したので(?)、今回は京大ローの授業について取り上げたいと思います。

 

1 前期

  • 公法総合1
    公法総合1は、行政救済法を取り扱います。
    教材は、ケースブック行政法(弘文堂)を使用します。
    授業の進め方は、先生がレジュメに沿って講義し、ときおり事前に配布された予習課題を指名した学生に答えさせるというものです。質疑応答(以下「ソクラテス」といいます)は優しいですが、関連質問が飛んでくるのですぐには解放されません笑
    担当の先生は綿密に授業準備をされるので、非常にわかりやすく、かつ、司法試験にも活かせる内容だと思いました。

  • 民法総合1
    民法総合1は、契約法を中心に扱います。
    教材は、京大本といわれる、民法・総合事例演習(有斐閣)を使用します*1
    授業の進め方は、設問に沿って訴訟物、請求原因等々を答えさせるというものです。ソクラテスは優しい先生でした。なお、山本敬三先生ご担当のクラスは、相当ソクラテスで絞られるようです...
    授業で扱う事例問題は司法試験を凌駕する難易度なので、予習・復習、特に復習をしっかりしないと期末試験で大火傷をします。自主ゼミを組み事例に対する解答を起案して、その起案を検討しあうと有益だと思います。

  • 商法総合1
    商法総合1は、紛争解決編と呼ばれる分野を扱います。今まで勉強してきた馴染みのある論点を取り扱う問題が多いです。14回目の授業では手形法・小切手法を取り扱います。
    教材は、会社法事例演習教材(有斐閣)を使用します。
    授業の進め方は、設問ごとに学生に解答させるというものです。商法総合の先生は皆さんお優しいのでソクラテスはゆるふわです(もちろん、予習していないと厳しく指弾されます)。
    商法総合1の内容は司法試験的にかなり重要なものばかりなので、しっかり復習することをオススメします。教材の巻末に、自習用として、事例問題がついているので起案してみるのが有効です(巻末に軽い解説もあります)。

  • 刑法総合1
    刑法総合1は、刑法総論(共犯を除く)を扱います。
    教材は、ケースブック刑法(有斐閣)とオリジナルの事例問題を使います。ケースブック刑法は、設問の趣旨がよくわからない問題、学説に終始する問題が割とあるので、正直あまり役に立たないように思います...(実際に授業を担当されている先生の中には、この本をあまりよく思っていない先生もいらっしゃるようです)
    授業の進め方は、設問について学生に答えさせるというものです。ソクラテスは基本的に優しいのですが、たまに厳しく詰められることもあります。
    復習としては、ロー入試の対策と同様、論マス・重問等の短文事例問題を繰り返すことをオススメします。授業をしっかり聞いているだけでは期末試験で良い点は取れない傾向にあります。
    オリジナルの事例問題は答案を書き直すなどして復習すると非常に有益です。

  • 刑事訴訟法総合1
    刑事訴訟法総合1は、捜査法を扱います。
    教材は、ケースブック刑事訴訟法有斐閣)を使用します。刑法とは違い、練られた設問が多いです。難しい問題もそれなりにあります。
    授業の進め方は、指定された設問について解答させるというものです。ソクラテスは優しいです。リーガルクエストの著者のひとりである、堀江先生がこの授業を担当されていましたが、説明が非常にわかりやすく大変有益でした。
    復習としては、刑法と同様、やはり短文事例問題を繰り返すことをオススメします。刑事系は論パを適切かつ正確に貼り付けられるかが攻略の基本なので笑

  • 民事訴訟実務の基礎
    この授業は、要件事実、事実認定、民事執行・保全を扱います。要件事実に大部分が割かれます。
    教材は、新問題研究(法曹会)等の書籍、オリジナルの予習課題を使用します。要件事実については、いわゆる大島本と呼ばれる、大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎<上巻>」(民事法研究会)を使うことを強くオススメします。
    担当される先生方は、現役裁判官か裁判官経験者です。ソクラテスは割と長いです。
    要件事実の授業は、かなり高度なところまで扱うという意味で相当難しいので、予習復習は全力を尽くしてください(予備試験の民事実務基礎よりもはるかに難しいです)。前期の基幹科目の中で、単位を落とす人が最も多く出る科目なので「前期の鬼門」と言われるくらいです。
    この科目は、提出課題が課される点が特徴的です。この提出課題は難易度が高く、ある程度妥協しないと永遠に終わりません笑
    なお、入学前に要件事実を軽く一周しておくと授業が楽になります。

2 後期

  • 公法総合2
    この授業は、行政法総論と憲法訴訟で構成されます。
    使用教材は、ケースブック行政法です。憲法訴訟については、事前に教材がアップされます。
    授業の進め方は、設問に対する解答を答えさせるというもので、ソクラテスは基本的に優しいです。
    行政法総論に関しては司法試験の過去問を使っての勉強がオススメです。
    憲法訴訟に関しては、授業の復習をきっちりしましょう。憲法の基本書にはあまり詳しく取り上げられていないところまで深くやるからです(佐藤幸治日本国憲法論」でも対応が厳しいです)。

  • 民法総合2
    この授業は、物権(担保物権を除く)、不法行為をメインに扱います。
    使用教材・授業の進め方・復習の方法は民法総合1と同じです。
    令和2年度から潮見先生が担当されなくなるのが残念でなりません。

  • 商法総合2
    この授業は、紛争予防編と銘打って、種類株式といった細かい分野、組織再編等を扱います。司法試験にも出題されづらい分野も取り扱うので、馴染みのないものが多いです。
    使用教材・授業の進め方・復習の方法は商法総合1と同じです。

  • 民事訴訟法総合1
    この授業は、既判力・複雑訴訟を除いた範囲を取り扱います。
    使用教材は、ケースブック民事訴訟法(弘文堂)、ロースクール民事訴訟法(有斐閣)です。このような両刀使いをするロースクールは非常に珍しいそうです。
    授業の進め方は、設問に対する解答を答えさせるというもので、ソクラテスは基本的に優しいです(厳しい先生もいらっしゃいますが)。
    復習としては、あくまで個人的な例ですが、ロースクール演習民事訴訟法(法学書院)をメインに、補充的にロープラ(商事法務)を使っていました。

  • 刑法総合2
    この授業は、共犯と刑法各論を取り扱います。
    授業の進め方等は、刑法総合1と同様です。

  • 刑事訴訟法総合2
    この授業は、公訴・公判・証拠法・裁判・上訴再審を取り扱います。
    刑訴法の鬼門である、訴因変更と伝聞が待ち受けています笑
    伝聞については、後藤昭「伝聞法則に強くなる」(日本評論社)、工藤昇ほか「事例でわかる伝聞法則」(弘文堂)が有益です。お好きな方を一冊どうぞ。
    授業の進め方等は、刑事訴訟法総合1と同様です。

  • 法曹倫理
    この授業は、弁護士職務基本規定の解釈を中心に扱います。
    弁護士の先生方が担当されます。
    授業の進め方としては、4〜5人で一つの班を作り、班で事前に与えられた設問の解答を作成、授業で報告し、その解答について先生が講評し設問の解説をするというものです。
    使用教材は、弁護士倫理(慈学社)、解説 弁護士職務基本規定(日弁連)です。
    基幹科目にしては、比較的楽な授業です。しかし、法曹倫理は、弁護士として実務に出る際には非常に重要なので、よく勉強しておきましょう(予備試験にも法曹倫理は出題されます)。
    法曹倫理の単位を取得していることがエクスターンシップの履修要件になりますので、エクスターンシップに行こうと考えている方は単位を落とさないようにしましょう(もっとも、試験を受ければ単位は来ると思います)。

 

3 選択科目(私が履修したもののみ記載します)

  • 現代正義論(後期、選択科目Ⅰ)
    いわゆる法哲学の一部を取り扱います。
    面白いと感じるかどうかは人によります。
    試験は割と緩めです。試験範囲は絞ってくれます。なお、今年度の試験を受けた受講者は全員C以上の成績がつきました。

  • 労働法1(前期、選択科目Ⅱ)
    労働法全体を概説するというものです。講義形式で授業が進みます。
    試験問題は事例問題2問で構成されます。難易度は普通です。
    司法試験の選択科目を労働法にしようと思っている方は、水町勇一郎「労働法」(有斐閣)を使って授業を受けていることが多かったです。選択科目にしない場合は、森戸英幸「プレップ労働法」(弘文堂)が適度な分量かつ飽きさせない読み口なのでオススメします(私も使っていました)。

  • 経済法1(前期、選択科目Ⅱ)
  • 経済法2(後期、選択科目Ⅱ)
    経済法1、2を通じて独占禁止法全体を概観できます。講義形式で進みます。
    経済法1は基本的事項を概観し、経済法2は基本的事項を復習しながら高度な論点にも目を向けるという構成になっています。
    使用教材は、金井貴嗣ほか「独占禁止法」(弘文堂)です。この本に沿って授業が進みます。レジュメは原則としてありません。百選も使いますが、コピーで足りると思います。演習用の本としては、川濱昇ほか「論点解析 経済法」(商事法務)がオススメです。経済法選択の方にとって、上記書籍は三種の神器になると思います(とりわけ論点解析は必須です)。
    初めて経済法に触れるという方には、川濱昇ほか「有斐閣アルマ ベーシック経済法」(有斐閣今春に新しい版が出るそうです。)をオススメします。
    担当の先生は、授業がわかりやすいだけでなく、個別質問にも非常に懇切丁寧に対応してくださいます。様々な質問に対してたくさんのアドバイスをくださる非常にお優しい先生です。

京都大学法科大学院 2019年度授業雑感は以上です。参考にしていただければ幸いです。
海外エクスターンシップ、エクスターンシップ1については、後日記事にしたいと思います。

*1:令和2年度入学生からは京大本を使わないそうですが